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学校業務を改善する Part1
「学校の先生は忙しい」
これは周知の事実です。
多くの人たちは「部活動の指導は専門の外部コーチに委託して教員の負担を減らすべきだ」と言います。
たしかに外部コーチに委託して全国大会を目指すような学校であれば良い提案です。
しかし、学校によって部活動の位置づけは異なります。
その道のプロを育成するために部活動があるわけではありません。
教育活動の一環です。
生徒の心身の成長を丁寧に見守っていきたい教員は可能な限り部活動の指導に関わりたいと思っています。
学校教育に精通していない外部のコーチに委託する場合、生徒が大小さまざまなトラブルに巻き込まれることが少なくありません。
そのため、教員の多くは部活動を指導する負担を減らしたいと思っていても、部活動の指導を外部のコーチに丸投げすることには否定的です。
本ページでは、教員の皆さまの心情を考慮した上で学校業務を改善していきたいと思います。
何よりも「教育」をないがしろにしない改善方法を提案します。
本ページを読んで「自分の勤めている学校ではこの件について不満がない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
学校運営が円滑で効率よくおこなわれている場合にはそのように感じると思います。
そのような方はご参考程度にお読みください。
それでは、今回は学校業務を改善する1つめの方法を紹介します。
教員は生徒に勉強を教え、放課後は下校時間まで部活動の指導をしています。
その他にも一緒に掃除して、給食の指導も担っています。
このような業務はすべて生徒の目に見えるものです。
生徒の見えないところでは教材研究をして、プリントを作成して、提出物の添削をしています。
これだけですでに忙しいですが、教員をさらに多忙にしているのが会議です。
このページ内の目次
会議ばかりの毎日
とある学校の実例です。
たとえば、文化祭の打ち合わせです。
会議は放課後に始まって2時間以上も続きます。
このような打ち合わせは文化祭が終わるまで何十回と繰り返されます。
内容は文化祭当日の教室の割り当て、タイムスケジュール、屋台メニューの是非、文化祭期間の警備など多岐に渡ります。
これは文化祭に限ったことではありません。
体育祭や避難訓練などすべてにおいて各担当者が何度も打ち合わせをします。
しかも、同じ教員が文化祭、体育祭、学校説明会、避難訓練、宿泊学習などほぼすべての担当を兼務しているので、彼らは一年中会議ばかりしています。
きっと会議の連続で疲弊した毎日を送っていることでしょう。
その努力と忍耐は称賛しますが、望ましい労働環境で働いているとは言えません。
ここまで読んで、「自分の学校とは違う。文化祭や体育祭の行事も直前の職員会議で流れを一度聞くだけだ」、「自分はたくさんの係を兼務していない」と感じた人もいらっしゃるでしょう。
そのような方たちは恵まれた労働環境で教育に従事しています。
学校側が生徒一人ひとりに目が行き届く環境を整備しているのです。
でも、実際に会議ばかりしている学校はあります。
会議による拘束時間が長くなればなるほど、夜遅くまで職員室もしくは帰宅後に自分の部屋で残業することになります。
そんな生活が当たり前になっている教員の方々は日本にたくさんいらっしゃると思います。
今、その生活を改善してみませんか。
生徒指導は非効率的であっても構いません。
でも、教員同士の会議は効率的であってもよいですよね。
これから「会議を効率的におこなう方法」を提案いたします。
ぜひその方法を参考にしてご自身の出席している会議のあり方を改善してみてください。
会議を効率的におこなう方法
①連絡事項は職員室内で回覧板を回して済ませる
協議する必要のない連絡事項を会議で伝えるのはやめましょう。
職員室内で回覧板を回せば連絡事項は伝わります。
各担当者も自分の空き時間に目を通せばよいので負担になりません。
サインして回覧するので全員が読んだかどうかを確認するのも簡単です。
簡単な協議事項であれば回覧板で済ませることも可能です。
原案を修正したいときは回覧板に書き込めば良いからです。
職員室内の教員がネットワークでつながっているのなら、回覧板の代わりにメールでも構いません。
これらの方法をとることで、どうしても全員で話し合う必要のある議題だけを会議で取り上げればよいことになります。
これだけで会議の回数をかなり減らせます。
②たいして効果の上がらない議題は扱わない
学園祭の直前になって次のような発言をする教員がいます。
「学園祭の準備の際に机を運搬するのに毎年時間が掛かっているんだよね。もう少し早くならない?」
学園祭の担当者たちは会議を開いてどうしたら時間を短縮できるか考えます。
ああでもない、こうでもないと1時間以上掛けて話し合うときもあります。
わずかにゆがんだ針金をまっすぐ伸ばそうとするかのように、些細なことに完璧を目指します。
しかし、学校はイベントの企画・運営会社ではありません。
教育活動を通して子どもたちの心身の成長を促すことが本業です。
だから、行事の一つひとつに完璧を求める必要はありません。
完璧を求めるのは災害に備えた避難訓練くらいでしょう。
机の運搬に時間が掛かりすぎと発言した教員はどれだけ早くなれば満足するのでしょうか。
主観的な基準に振り回されるのは時間の無駄です。
もし10分や20分も短縮したいのであれば、教室の割り当て、展示方法、運搬に従事する教員と生徒の配置転換など抜本的に見直す必要があります。
学園祭の直前にそれらを変更するにも限度があります。
このように話し合ったところでたいして効果のない議題は取り上げないのが会議を減らすコツです。
机の運搬はあくまで一例です。
体育祭のテントの設置場所、卒業式の在校生の登校時間など正解が1つとは限らない話し合いを延々と続けるのは時間の無駄です。
さっさと切り上げて他の議題を話し合いましょう。
③配布プリントは事前に配っておく
会議で用いるプリントは事前に職員室の各先生の机上に置き、事前に目を通してもらうようにしましょう。
会議の時間を短縮できます。
④校務分掌における一人あたりの担当を減らす
会議が長くなる傾向にある学校では、各教員が多くの業務を兼務しています。
みんながみんな兼務しているので、どの会議も同じ顔ぶれです。
文化祭、体育祭、学校説明会、避難訓練、校外授業、入試対策など、どの会議にも出席しています。
校務分掌の役割分担が減れば、自分に関係のない会議に出席する必要がなくなります。
一人あたりの担当を減らすことは学校業務を改善するための最大の近道です。
⑤大人数で会議をしない
皆さんの学校では大人数で話し合いをしていませんか。
教員全員が参加する職員会議は仕方ありません。
でも、職員会議以外の会議まで大人数でおこなっているのなら見直してみましょう。
なぜなら大人数の会議はデメリットが多いからです。
実情にあわせてそのデメリットを以下に挙げてみます。
大人数の会議のデメリット
A、時間が長くなる
担当者が多ければ多いほど、1つの議題を決めるだけで時間が掛かります。
「体育祭のクラス対抗リレーで1位になったチームに何点あげましょうか」という話し合いを例に挙げてみましょう。
10人以上の教員がこの件について順番に意見を言っていきます。
「120点がよいと思います。なぜなら他の種目よりも・・・・・・」
「300点はどうでしょうか。最後の種目なので大逆転があったほうが・・・・・・」
各教員が根拠を交えながら意見を述べ、全員が発言し終えました。
でも、まだ終わりません。
異なる意見がある中で結論を下すのには時間が掛かります。
会議に参加する人数が多ければ多いほど時間を要します。
自分の主張を曲げない頑固な教員がいればリレーの得点を決めるだけで1時間以上掛かります。
そんなに掛かるわけないと思う人もいるかもしれません。
でも、実際にそういう学校はあります。
さて、ここで考えてみたいのはそもそもクラス対抗リレーの得点を決めるのに10人以上の教員が必要だったでしょうか。
3人もいれば決められますよね。
しかも、3人の話し合いならばあっと言う間に決められたはずです。
何でもかんでも担当者全員で話し合いをすると、会議はどんどん長くなります。
また、大人数の会議では発言をためらう人が増えて沈黙の時間が生じるので、話し合いはさらに長引きます。
B、もっとも良い意見が採用されない
会議の進行役は十人十色の意見をどうまとめるでしょうか。
会議の参加者がどれだけいても、進行役が上手に進めることができれば会議は円滑に進みます。
しかし、上下関係の緩い教員の世界ではベテランや中堅あたりの教員が意見をぶつけ合うので、会議は時に険悪なムードになります。
会議の進行役はそんな教員たちを前に及び腰になります。
そのため、結論を導き出す際に角が立たないことを優先してしまうケースがしばしばあります。
最初に全員の意見を一通り聞きます。
全員が意見を言い終えたところで、「では、全員の意見を聞いた上でどの意見がよいと思いましたか。端にいる先生から順番に教えてください」と再び全員の意見を聞き始めます。
改めて全員の意見を聞くので会議は長引きます。
ベテランや頑固な教員の顔色をうかがいながら候補を絞ります。
それから、もう一度全員の意見を聞いていきます。
ここまできてようやく候補が2つくらいに絞ることができました。
ついに進行役が最終判断を下します。
「〇〇先生と□□先生の意見が良さそうなので、二人の意見の中間をとりましょうか」
1つの意見だけを採用すれば波風が立つので中間の案を採用したわけです。
さて、〇〇先生と□□先生の意見はそれぞれ良いと思われますが、その中間の案は良いと言えるでしょうか。
中間の案は必ずしも折衷案とは限りません。
大勢が集まって話し合いを重ねたにもかかわらず、中途半端な案にまとまることがあるのです。
全員の意見を尊重することと多数決を優先しすぎているのです。
ベテランや頑固な教員に忖度して彼らの意見ばかり採用してしまうのもよくありません。
大勢が会議に参加すると気遣いが求められ、良い案を採用できなくなります。
もっと良い意見があったのにそれが採用されないならば、何のために話し合っているのでしょう。
長時間の会議に参加したのに十分な成果が得られないのであれば組織として正しく機能していません。
担当者をもっと減らして少人数制の会議にすれば、発言しやすく中身の濃い話し合いができます。
結論を下すまでのプロセスも面倒でなく、もっとも良い意見をそのまま採用できるようになります。
C、生徒指導へのしわ寄せ
大人数の会議が日常的にあれば、教員の日々のスケジュールはどうなるでしょうか。
会議参加者全員の予定が調整しやすい時間はやはり放課後です。
よって、放課後に会議を開くことになります。
本来は部活動の指導の時間であるにもかかわらず、会議があるので活動場所に向かうことができません。
安全管理上の問題がありますね。
また、技術的な指導ができないので部員のスキルアップが遅れます。
部活動に限りません。
会議のために生徒指導や学習指導が後回しにされることもあります。
授業の空き時間に会議を開いている場合には、会議が延長して授業に遅れることもあります。
10人の教員が放課後に会議室に籠もって2時間話し合ったとします。
10人×2時間で合計20時間です。
生徒に接する時間を延べ20時間分も失ったのです。
生徒に目を向けているつもりが、いつの間にか生徒に背を向けてしまっています。
少人数の先生で話し合えばこれほどの時間は掛からなかったでしょう。
会議の時間が短縮できれば生徒対応の時間を確保できます。
そもそも数人の先生の都合で会議の日程を決められるので、部活動や生徒指導のない時間に会議を開くことができます。
以上のように、大人数の会議は動きが鈍い上に成果も限定的です。
会議をもっとスリム化して機能性とスピードを高めましょう。
どうしても担当者が多くなるときは役割を細分化することで会議をスリム化してみてください。
まとめ
学校によって労働環境は大きく異なります。
生徒と一日中接することのできる学校もあれば、教員と打ち合わせばかりしている学校もあります。
校務分掌を改善して教員一人あたりの担当業務が減れば、その分だけ各教員が出席する会議は減ります。
それは会議の少人数制にもつながるので短い時間で効率よく話し合いができるでしょう。
これを実現するためには教員同士の信頼関係が大切です。
同僚を信じて仕事を託すことできれば、結果的に自分の負担も減らすことができます。
この機会に学校業務を振り返り、会議の削減と短縮化を図ってみましょう。
学校全体に変革をもたらすことが難しければ、まずは自分が責任者になっている会議から手をつけてみましょう。
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今回紹介した学校業務の改善は、学校組織内の教員だけで進めるのは簡単ではありません。
なぜなら職員室内の小さな社会にはしがらみが多いからです。
話し合いを続けている間に人間関係が悪化して、改革が無に帰すこともあります。
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教育コンサルタントのご紹介
滝川 知靖(たきがわ・ともやす)
東京都在住の教育コンサルタント。大学卒業後に教員になり、私立高校や通信制サポート校を経て東京都内にある中高一貫教育の私立女子校で教壇に立つ。約20年間で中学1年から高校3年までの全学年の担任を務めた。特に、中学3年と高校3年の進路指導の経験が豊富。また、生徒一人ひとりの悩みに昼夜を問わず親身になって相談に乗る日々を過ごしてきた。特に、悩みを抱える子どもたちを献身的に支えたことで知られている。
現在は教育コンサルタントとして生徒および保護者のサポートをしている。その内容は、進路相談、勉強方法、不登校の生徒のサポート、発達障害のある子の支援など多岐に渡る。また、学校現場からの相談にも対応している。
近著『令和時代の私立中学校・高校選び ~わが子の進学先をどう選ぶか~』
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