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PTAとは?
PTAは「Parent-Teacher Association」の略称です。
直訳すれば「親と先生の協会」となります。
保護者と先生が協力し、学び合い、教養を高めることにより子どもの健全な発達に寄与することを目的としています。
PTAは学校単位で組織されていますが、他校と協力することもあります。
公立の中学校であれば同地域の小学校のPTAと連携して地域の行事に関わり、私立学校であれば同じエリアの私立学校と協力するなどしています。
PTAの前身は「父母と先生の会」です。
第二次世界大戦後、当時の文部省が名付けました。
歴史の長い学校の中には現在でもその名称を残している学校があります。
一方で、近年PTAをPTCAと改称する学校があります。
Cは「Community」つまり、地域社会という意味です。
教育と地域社会のつながりが強くなっているため名前に反映させています。
PTAの活動内容
PTAの活動は文化祭などの学校行事の支援、広報誌の作成、懇親会の企画・運営など多岐に渡ります。
中学と高校の活動は小学校に比べると負担が減ると言われています。
生徒たちがある程度の役割を担えるからです。
それでもPTA活動は保護者の負担になることは間違いありません。
特にPTA会長、副会長、書記、会計の役員に選ばれた場合は仕事量が大幅に増えます。
また、他校のPTAとの連携を任されると学校の代表として懇談会やセミナーに参加するなど負担が増えます。
PTAは法的に加入を義務づけられていない
保護者の中には「PTAって面倒だ」、「そもそもPTAなんて必要あるのだろうか」と感じる人もいるでしょう。
けれども、子どもが入学すると保護者は自然な流れでPTA活動に参加するようになります。
おそらくPTA会費を授業料と一緒に納めています。
どこの学校にも当たり前のようにPTAがありますが、実はPTAの結成を義務づける法律はありません。
それに伴って保護者にPTAへの加入を義務づける法律もありません。
だからといって、「義務ではないならPTA活動に参加しない!」と主張する保護者はほとんどいません。
子どもたちのためにPTA活動を頑張っている保護者がいます。
PTAを交流の場として楽しみにしている保護者もいます。
そして忙しい中で無理して活動している保護者がたくさんいます。
そのような人たちがいる中で自分だけ参加しないのは気が引けるのです。
結局、法的拘束力や意思に関係なくほとんどの人はPTA活動に参加しています。
PTA活動を懸念する保護者
教員として入試の個別相談をしていると、受験生の保護者から「PTA活動はどのくらいありますか?」としばしば聞かれます。
続けて「できる限りのことはしたいと思っています」という言葉が決まって添えられます。
受験生のいる保護者にとってPTAの活動頻度は気になるようです。
「子どもの教育環境を最優先にして進学先を決めていきたい。でも、入学後に自分がどのくらいPTA活動に関わるのかを知った上で子どもの志望校を決めたい」と思う保護者は多いです。
それもそのはずです。
今の保護者はとても忙しいです。
仕事、介護、育児など様々な理由でPTA活動への協力が難しいです。
本音を吐露する保護者もいます。
「PTAの活動日が仕事のないフリーな日だとしても、貴重な休日なので心身を休めたい」
「単純に他の保護者との関わりを減らしたい」
このような人にとってPTA活動は悩みの種です。
PTAはすべて無償で働くので奉仕の精神を宿していなければストレスにつながります。
実際、学校評価アンケートにはPTA活動への不満が多く書かれています。
特に、生徒数の少ない学校は不満の比率が高くなります。
生徒数が少ないということは保護者の数も少ないので一人当たりのPTAの仕事量が増えてしまうからです。
参加する人と参加しない人との亀裂
PTAは主に平日の午後や土曜日に集まって活動するため、仕事で参加できない人もいます。
仕事を簡単に休めないことは誰もが知っていますので理解は得られます。
ただし、PTAの活動にまったく参加しないまま一年、二年と過ぎていくと、頑張って参加している保護者の不満を募らせてしまいます。
その結果、新年度のPTA役員の選出の際にこれまで全然参加していなかった親が突然選ばれることがあります。
このようなことがあるため、普段参加できない保護者も気遣いを忘れないことが大切です。
生徒たちも学校生活を通して人間関係を育むことの大切さを知りますが、保護者の世界も違いはありません。
先生はPTAに参加しない?
前述の通り、PTAは「親と先生の協会」という位置づけです。
その意味合いから保護者が「なぜ一部の先生たちはPTA活動に参加しないのか?」と不満を抱くことがよくあります。
保護者が多忙な中集まっているのですからもっともなご意見です。
たしかに一部の教員はPTA総会や懇親会に参加する程度で普段はPTA活動に姿を現しません。
非協力的に見えるかもしれませんね。
PTA活動にほとんど参加しない教員を擁護するわけではないのですが、参加できない理由について少しふれておきます。
教員の業務には保護者にあまり知られていないものがあります。
外部の人には見えない仕事。それはどんな職種にもありますよね。
部活動の引率であれば目に見える仕事なので、その日PTAの会議に参加できないことは保護者の皆さんに理解してもらえます。
一方で、一部の教員が週末の朝から夜まで入試問題の作成に追われていることはあまり知られていません。
どの学校でも国語、数学、英語の担当者は入試問題の作成に少なからずかかわっています。
けれども、具体的に誰がどんなふうに入試問題を作成しているかは極秘事項です。
間違っても保護者に「私は入試問題を作成しているのでPTA活動に参加できません」とは言えません。
そのため、保護者から「次のPTAの懇親会には参加しますか」と聞かれ、本当の理由を言えずに謝ったことが私自身何度もあります。
私は国語科の教員でした。
国語の入試問題の作成は本屋に行って入試にふさわしい小説や説明文を見つけるところから始まります。
これがそう簡単には見つかりません。
夏頃まで週末は休日返上で一日中大きな本屋で過ごします。
その後の道のりも平坦ではありません。
入試問題に誤りがあれば学校の評判を落としますので、入試問題の作成と確認作業は一年掛かりで慎重に行います。
このように担当している教科、学年、部活動などの特性からPTA活動にあまり参加できない教員もいます。
もちろんPTA活動に支障が出てはいけません。
そこで学校は校務分掌によってPTA担当の教員を決めています。
校務分掌とは学校内における業務分担です。
PTA担当になった者は教員代表としてPTA活動に従事し、それ以外の教員は他の業務にあたります。
これにより学校全体の業務が円滑に進むようにしています。
業務の分担化によって、PTA担当以外の教員はPTAがいつ集まってどのような活動をしているのかさえ把握していないこともあります。
PTA活動に無関心な教員だと批判されそうですが、そのような教員もその分他の業務で活躍していますのでご理解いただきたいところです。
PTA活動の見直し
PTA活動に対してストレスを感じ、その結果他の保護者や教員に不満を抱く保護者は少なからずいます。
子どもの卒業までずっと保護者が辛抱しているのはあまり望ましいことではありません。
皆が気持ちよくPTA活動に参加できるようにPTA活動を見直し、活動内容をスリム化を図りましょう。
保護者から改革を促すのは言いづらいでしょうから、学校側が提起するのがベストです。
では、具体的にどのようにPTA活動を変えていけばよいでしょうか。
いくつか例をあげてみます。
改革のヒントにしてみてください。
例1 PTA広報誌
広報誌の内容はPTA活動の報告、新しい教育施設や先生の紹介、教育活動の報告が主なものです。
学校、生徒、家庭、卒業生をつなぐ役割を果たしていますが、広報誌は本当に必要でしょうか。
広報誌発行のために保護者が疲弊しているのであれば一考の余地があります。
長く続いてきた広報誌の廃止を不安に思う人もいるかもしれませんが、改革には割り切った考え方も必要です。
昔と違って今は学校のホームページを見れば最新の情報が更新されています。
「本当に広報誌は必要だろうか、なくて困ることがあるだろうか」と話し合うことをおすすめします。
例2 保護者懇親会
保護者懇親会はいかがでしょうか。
懇親会では準備を担当する保護者がいます。
具体的には会場の設営やお茶、お菓子の買い出しなどをしています。
ここで懇親会でよく起こる事例を紹介します。
ある年に保護者懇親会を担当することになった保護者が「せっかく懇親会をするならホテルの会場を貸し切りにして盛大にしようよ」と提案しました。
学校外の場所を貸し切って開催する懇親会はその企画から運営までに大変な労力が必要になります。
幸い、他の担当者たちも賛同してくれて、その懇親会は保護者や教員に好評でした。
次年度に懇親会の担当になった保護者は自身の仕事で忙しく懇親会の打ち合わせをする時間があまりありません。
そのため、なるべく負担の少ない学校のホームルーム教室で開く懇親会を計画しました。
しかし、前年度の懇親会の評判が良かったため他の保護者たちからホテルで懇親会を開いてほしいと求められました。
結局、大きな負担を感じながら前年度と同様にホテルで懇親会を開くことになりました。
これ以降この学校ではホテルで懇親会を開催することが定番になりました。
このようにやる気のある保護者が始めたイベントが恒例化して、次年度以降の保護者が苦労することはよくあります。
PTA活動が充実するのは良いことですが、活動が肥大化して担当者の負担につながっていないか検証することは必要です。
「PTAとしてこれをする必要があるのか」、「ここまでする必要があるのか」と疑問を持ち、適切にスリム化するべきです。
例3 PTAの集会
スリム化という点ではPTAの集まる回数も減らせると思います。
全員の意見が一致するまで話し合うのは骨が折れます。
仕事を細分化して各担当者に一任すれば集まる回数を減らせます。
また、わざわざ集まらなくてもメールの報告で済ませられることも多いはずです。
私立校の場合、各家庭の居住地が広範囲にわたるので学校に集まるのも面倒です。
なるべくオンライン集会にして負担を減らしましょう。
例4 特典付き
「全然やりたくないけど学園祭のPTAの屋台責任者になってしまった」
「子どもが二人在学しているという理由で会長に推薦されてしまった」
本当は断りたいけれど断るだけの理由がないということありますよね。
断り切れないまま仕事を押し付けられると気分が乗りません。
でも、PTA活動に特典が付いていたらどうでしょうか。
たとえば、PTAの役職や行事の責任者になった保護者は以下の特典があります。
・運動会のゴール前にあるテントでわが子を応援できる!撮影場所としてもベスト!
・合唱コンクールや学芸会では最前列の席で見られる!
・バザーの商品をオープン前に購入できる!
このような特典があれば役員や担当者を選ぶ際に押し付け合う前に自ら立候補する人も現れます。
特典があることでPTAに対するモチベーションも高まるし、何よりも精神的にいいですよね。
まとめ
共働き世帯が多くなって両親ともにPTA活動に参加できなくなっています。
仕事だけでなく、親の介護など皆がそれぞれ忙しく過ごしています。
このようなご時世でPTA活動を継続するならば、PTA活動の見直しとスリム化は必須です。
・無駄なものをなくす!
・頑張りすぎない!
・楽できるところは楽をする♪
・頑張った人にはメリットがある♪
「優等生」になる必要はありませんので、無理なく続けられる活動にしていきましょう。
見直すべき活動内容は学校によって違うと思います。
各学校で保護者の意見に耳を傾けながら活動内容を検証するとよいでしょう。
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教育コンサルタントの紹介
滝川 知靖(たきがわ・ともやす)
東京都在住の教育コンサルタント。大学卒業後に教員になり、私立高校や通信制サポート校を経て東京都内にある中高一貫教育の私立女子校で教壇に立つ。約20年間で中学1年から高校3年までの全学年の担任を務めた。特に、中学3年と高校3年の進路指導の経験が豊富。また、生徒一人ひとりの悩みに昼夜を問わず親身になって相談に乗る日々を過ごしてきた。特に、悩みを抱える子どもたちを献身的に支えたことで知られている。
現在は教育コンサルタントとして生徒および保護者のサポートをしている。その内容は、進路相談、勉強方法、不登校の生徒のサポート、発達障害のある子の支援など多岐に渡る。また、学校現場からの相談にも対応している。
近著『令和時代の私立中学校・高校選び ~わが子の進学先をどう選ぶか~』