進路指導を長年担当した元教員で、現在は教育コンサルタントをしている滝川知靖です。
受験は人生の大きな分岐点です。
そのため、志望校選びで失敗したくありませんね。
そこで志望校選びのアドバイスをいたします。
今回は志望校を決める際に大いに参考になる「学校説明会」をテーマにします。
目次
学校説明会に参加しよう
学校説明会では学校のカリキュラムや授業について詳しい説明があります。
学校案内などのパンフレットやホームページに掲載していない情報も聞けますので、学校への理解がより深まります。
説明会では校舎見学ツアーが実施されますのでぜひ参加しましょう。
ツアーがなくても個別に希望すれば案内してくれるはずです。
できればお子さんも一緒に参加しましょう。
お子さんが学校内を見て回ることで新しい学校生活を具体的にイメージしやすくなります。
「この学校に入学したい」という思いが強くなれば受験勉強にいっそう身が入ります。
学校説明会に参加し始めるタイミング
学校のほうで対象学年を設定していることがありますが、設定していなければ何年生でも参加できます。
私の勤務していた私立中学校で学校説明会を開催したとき、ご両親が小学三年生の子どもを連れて参加していました。
とても早い段階から参加していますね。
子どもには受験の自覚があまりなさそうでしたが、ご両親はしっかり将来を見据えている様子でした。
とは言っても、ここまで早くからはなかなか動き出せないと思います。
志望校の難易度や家庭状況などから説明会に参加する時期を決めましょう。
ところで、九月頃に学校説明会に参加した小学六年生や中学三年生の保護者が次のようにおっしゃることがあります。
「お恥ずかしい話ですが、今までまったく受験の準備をしていなくて……今日初めて学校説明会に参加しました」
このようにおっしゃる親御さんは結構いらっしゃいます。
受験学年の秋から学校説明会に参加し始めるのは遅いという認識のようです。
一般的に中学受験の場合、受験準備をうまく進めるために小学六年生の六月には志望校を決めたほうがよいと言われています。
多くの私立中学校は入試から入学式後までの繁忙期にあたる、二月から五月まで学校説明会を実施しません。
その点を考慮すると、五年生までに学校説明会に参加して志望校をある程度決めておくと良さそうです。
そのうえで六年生になったら志望校の学校説明会に再び参加し、募集要項や入試の傾向について最新の情報を得ることをおすすめします。
高校受験の場合、中学三年生の夏までに学校説明会に参加して志望校をある程度絞りましょう。
秋頃にもう一度学校説明会に参加して志望校を最終決定したいところです。
なお、中学二年生で学校説明会に参加する人は少数です。
一年生はゼロと言ってよいでしょう。
中学受験でも高校受験でも受験生は志望校の学校説明会に何度も参加した上で第一志望の学校を選んでいます。
さらに、最近の特徴として第一志望の学校を決めた後もその学校説明会に参加し続ける子が多いです。
学校説明会の個別相談には参加する
多くの学校説明会では説明会終了後に個別相談の時間があります。
希望者だけが相談する場合と全員が個別相談に参加しなければいけない場合があります。
パンフレットに記載されている内容で気になったことや受験について分からないこと、入学後の心配な点など何でも聞いてみましょう。
人それぞれ気になることが違うものです。
メモ帳に質問事項をびっしり書いてきて、三十分以上かけて質問する熱心な親もいます。
疑問を解決して不安を解消した上で受験するかどうか決められるといいですね。
個人情報の提供
学校説明会では受験生や保護者の氏名や連絡先、通っている学校名や塾の名前などの記入を求められることがあります。
学校に個人情報を提供すると、学校説明会や学園祭の案内が郵送で届くようになります。
受験時期に電話が掛かってきて出願を勧められることもあります。
高校受験の場合に中学校名と氏名を志望校に提供すれば、その高校の先生がお子さんの中学校を訪問することがあります。
「ぜひ本校を受験してください」と担任や学年主任にお願いしに来るのです。
担任の先生はその生徒の人柄や部活動の様子、進路の進捗状況などを教えます。
「○○はテストでは思うような成績がとれませんが、授業も真剣に受けて家での勉強も怠けない子です」、「バスケットボール部で三年間頑張っています。後輩の面倒もよく見てくれます」、「〇〇は六人兄弟の長女で、経済的な理由から公立のA高校を第一に考えています。第二志望として私立高校を探している段階です」など情報はさまざまです。
受験生本人の知らないところで詳細な個人情報のやりとりをして良いのだろうかと疑問を感じますが、現実として高校と中学の間で情報交換は頻繁におこなわれています。
なお、私立中学校による小学校訪問は認められていません。
そのため、お子さんが小学生の場合は知らない間に志望校の先生がお子さんの担任の先生と接触することはありません。
塾の場合はどうでしょうか。
もし志望校にお子さんの通っている塾の情報を提供すれば、その学校関係者が塾を訪問します。
最近は塾の先生が塾生や保護者と面談してその子の進路を一緒に決めていくことが多いので、学校は塾の先生にも「本校を受験してほしい」とお願いしに行くのです。
塾については私立高校の先生だけでなく私立中学校の先生も訪問します。
つまり、小学生の通う塾にも訪問しています。
このように学校説明会などでお子さんの個人情報を提供すると、知らないところで志望校が子どもの在籍校や塾とつながりを持ち、子どもの情報を取得します。
受験することが未定の学校であれば、個人情報の提供は最低限に留めてもよいでしょう。
特にお子さんの通う塾名などは省略しても構いません。
親だけが学校説明会に参加する場合の注意点
親のみで学校説明会に参加する場合は参加用紙に個人情報をある程度書きましょう。
子どもを連れてこない上に子どもの名前は未記入で保護者の名前は苗字だけ、さらに住所は市区町村までしか書かない人がいます。
ここまで個人情報を伏せていると、学校から不審者ではないかと怪しまれます。
身元を隠す人を学校敷地内に入れるのは危険なことですので、学校が警戒するのも当然です。
実際、保護者のふりをした塾関係者が偽名を使って学校説明会に潜り込むことがあります。
合同進学相談会はまだしも学校説明会に参加する以上は氏名、住所、連絡先などは正しく書きましょう。
学校説明会に参加する意外なメリット
学校説明会に参加する時期について前述しました。
早い時期から学校説明会に参加するメリットは志望校を早くに絞り込んで受験準備を進められることです。
でも、それだけではありません。
自分の志望校を早い時点で決めてその学校説明会に何度も参加すれば、先生たちに名前と顔を覚えてもらえるという大きなメリットがあります。
面接と学力検査の結果を総合して合否判定する学校の場合、その参加回数がプラスに作用することがあります。
面接の得点は主観的であいまいなものです。
学校はあいまいさを活かして、説明会に複数回参加してくれたことを得点に上乗せすることがあります。
それを期待するかのように、学校説明会を皆勤で参加されるご家族もいらっしゃいます。
毎回同じ説明を受けるのは大変だと思いますが、入学への熱意は学校側に伝わります。
もちろん、面接の評価に説明会の参加回数を反映させない学校もあります。
また、学力検査だけで合否判定をする学校であればその得点だけで決定します。
そのため一概には言えませんが、学校側は説明会に何度も参加した受験生に対して好印象を抱くことが多いです。
まとめ
以上のように、学校説明会に参加することで志望校に対して理解がより深まります。
志望校選びで失敗しないためにも心配な点があれば個別相談を積極的に利用して解決しておくのが良いでしょう。
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著者紹介
滝川 知靖(たきがわ・ともやす)
東京都在住の教育コンサルタント。大学卒業後に教員になり、私立高校や通信制サポート校を経て東京都内にある中高一貫教育の私立女子校で教壇に立つ。学校説明会の企画運営、入試問題作成、入試面接など受験に広く携わってきた。約二十年間で中学一年から高校三年までの全学年の担任を務めた。特に、中学三年と高校三年の進路指導の経験が豊富。また、生徒一人ひとりの悩みに昼夜を問わず親身になって相談に乗る日々を過ごしてきた。特に弱い立場の子どもたちを支えたことで知られている。現在は教育コンサルタントとして生徒および保護者のサポートをしている。その内容は進路相談、勉強方法、不登校の生徒のサポート、発達障害のある子の支援など多岐に渡る。学校現場からの相談にも対応している。
近著『令和時代の私立中学校・高校選び ~わが子の進学先をどう選ぶか~』